天井はどこへ消えた
オレンジ色の朝日に勇気づけられた僕たちはこの旅で一番調子が良かった。
景気付けにマクドナルドでハンバーガーでも食べよう。
誰が提案したか分からないが今の僕たちは前傾姿勢。いいね。何個でも食べよう。
RVの外に出るとなんと!日差しが暖かい!!
ヨセミテ山中の零下と比べ物にならないほど心地が良い。
さらにテンションが上がった僕と冨澤はRVの屋根に上りこの眺望を楽しむ事にした。
「いいねえ!!」
屋根の上からはアメリカ中西部独特の乾燥地帯の景色が。
それを写真に収めようとしたその時、破裂音とともに僕の左足が宙に浮いた。
一瞬の出来事だった。
足元に目をやると、石原が使用しているベッドが見えた。
ベッドの上にはプラスチックの破片が散らばっている。なぜベッドが見えるんだ。RVの外だよなここ。
僕の体重で天井の一部分を踏み破ってしまったようだ。脆すぎないか。左足を載せただけなのに。
皆黙っていた。例えば、運転中に車を傷つけたのなら仕方がない。
道路の状況や天候、周りの車の様子などにも影響されるだろう。責めることはできない。
ただこれはどう考えても僕の過失だし、僕以外誰も悪くない。
風に飛ばされて屋根に着地してしまったか?そうではない。
大脳でこの日差しと気温を分析して勝手に盛り上がり、小脳で四肢に命令し、RV後部のハシゴで屋根に上った。
「これはゑがぺろが悪いね」
坂本が静かに言った。
僕のテンションは真っ逆さまに奈落の底に落ちた。
考えることは一つだけ。
修理代はいくら取られるんだろう。ハンバーガーを食べても全く味がしなかった。
石原が寝ている時だったら彼に向かってプラスチックの破片が降り注いでいたこと、今後雨が降ったら寝ている石原がずぶ濡れになることを想像すると笑えてくるが、今回のアクシデントによる自分の財政状況の方に気持ちは持っていかれていた。
エルモンテに電話をし、事情を説明するとラスベガスに支店があるのでそこにRVを持ってきてほしいとのこと。
情緒不安定のままラスベガスまで車を走らせた。