楽園の入り口
ふと思えばグランドキャニオンやヨセミテ国立公園で経験した恐ろしい寒さから逃れることができていた。
ラスベガスやヒューストン、ニューオリンズの寒さはそこまで応えていない。もう十分だった。しかし、それに満足しなかった3名がいた。
フロリダに行きたい、マイアミに行きたい、そしてヌーディストビーチで遊んでみたいと心のからの叫びが聞こえた。
ご存じの方も多いかも知れないが、マイアミはフロリダ半島の先っちょだ。
正直僕は莫大なガソリン代をかけてまで行く意味は分からなかったが、そこまで言われては仕方がない。
僕たちはジャクソンビルのWalmartから約600km南下し、マイアミのヌーディストビーチを目指した。
約10時間ほどでマイアミにたどり着いた。
僕は終始眠っていたので冨澤あたりが頑張って運転してくれたのだろう。
午前中にはマイアミ入りし、ビーチサイドのコストコに駐車。幕張のコストコと何ら変わらない味のホットドックを食す。うん、高校時代から食べ続けているいつもの味だ。チェーン店ってすごい。
ヌーディストビーチまではロサンゼルス以来のUBERを使った。
勃起すると強制退場になるとかーー誰が審査員なんだ?写真を撮ってはいけないとかヌーディストビーチでのルールやしきたりを坂本が車内で一生懸命解説してくれた。
爽快感
ヌーディストビーチに足を踏み入れると、本当に皆全裸。当たり前に全裸。何はともあれ全裸。言わずもがな全裸。諸行無常の全裸。
中年夫婦、マッチョお兄さん、はたまた、僕たちと同年代のスタイル抜群のお姉さん。
不思議なことに、何も感じない。性的興奮、醜悪、もちろん羞恥も。そこにはただただマイアミの乾いた風が吹いている。
森高千里も泡を吹くほどの気分爽快。
揺れる男棒、たなびく袋。
よくよく考えたら全裸で屋外を走り回ったことはないかもしれない。
そんなのおかしい。
だって近所を散歩している犬や動物園のチンパンジー、ディスカバリーチャンネルに登場するサバンナのライオンやオリックスだってみんな全裸じゃないか。彼らがイキイキしてる理由は他でもない全裸だからだ。
マイノリティーはわざわざ高い金を払って布切れを身につけている我々人間だ。
そう、僕たちは本来野生動物だから全裸で過ごすべきなのだ。
想像して欲しい。丸の内で全裸で働く日本人を。全裸の大人たちが密集している朝の総武線快速を。
全裸でニュースを読むニュースキャスターを。あゝ神々しい。生命の本来あるべき姿。
残念ながら再び布切れに身を包み下界に戻った僕たちはRVに乗り込み、ゴールのニューヨークまで一直線。ひたすら北上を始めた。