TGVに乗ってどこまでも
朝9時、パリのリヨン駅に僕はいた。
フランスの新幹線、TGVに乗って友人の「ロメオ」が住むアヌシーというスイスとの国境付近の街に向かうためだ。
TGVに乗る前にロメオについて話しておこう。
彼に初めて会ったのはスズメが凍死しそうなほど寒かった2017年1月28日。
渋谷東口の金の蔵だ。
マキシムが日本を旅行中にどこかで知り合ったのだろう。彼がそこに連れてきた。
ロメオは就労ビザを取得し、1年近く日本に滞在した。フランス料理店の皿洗い、工事現場警備員のアルバイトをしていた。
彼がフランスに帰る際、フランスに来ることがあるなら何日でも家に泊まっていいと言ってくれた。
僕は社交辞令を知らない。
おっと、TGVがやってきた。
これに乗らなければ。
アヌシー駅に到着すると、グレーのルノーで彼が迎えにきてくれていた。
マックスというスキンヘッドの青年も同乗していた。
駅から20分ほどでロメオの自宅に到着。
人生で初めて見るような豪邸だった。
庭にはプールとペタンクコート。
敷地内に坂道があるのが良い。
食事中、ロメオの友達がぞろぞろと集まってきた。
10人集まったところでサッカーをすることになった。
フランスにはシティスタジアムと呼ばれるサッカーコートが点在しているらしい。
フランスといえば代表チームやパリ・サンジェルマンが有名なこともあり、さぞかし皆サッカーがすこぶる上手いことだろうという期待を持って彼らとサッカーを始めたが、5分後には彼らは見事にその期待を裏切ってくれた。
日本人が全員刀を扱えたり、背負い投げをできるわけではないのと同じだね。
その夜、ロメオにあてがってもらった部屋で死んだように寝た。