ニュージャージーを発って二日後、僕たちはRVを借りたエルモンテのニューヨーク支店に到着した。
つまり7,300km以上を走り切ったことを意味する。
走破したルートは以下の通り。
RVを借り、ロサンゼルス市街を出た後ヨセミテ国立公園にチャレンジするも失敗。
ラスベガスで負けたのテンションを象徴するかの如く下へ下へ向かった。
とにかくRVを捨てられることが嬉しかった。
僕・冨澤・石原は両手を上げて喜んだが、一人だけ喜べない男がいた。オクラホマでオーニングを破壊し、修理費用の見積もりを待つ坂本だ。
アメリカ⑮(オクラホマ)坂本という男、本格的にRVを破壊我々の鉄の掟では、運転中のRVの破壊の修理費用は当事者:修理代の5割、その他:残りを1/3と決めていた。
半分は連帯責任といえ、想像すらできない金額のオーニング修理代の50%を負担すると決まっているのは怖すぎる。
RVを駐車し、片付けを済ませるとスタッフのチェックが行われる。
それを待つ時間は永遠に感じられた。
坂本の攻防
坂本が破壊したオーニングの修理費用の見積もりが出た。
5年前の記憶なので定かではないが確か6万円ぐらいだった気がする。
当時貧困を極めていた我々にとっては痛手すぎたが、まあ納得の金額だ。
しかし、張本人の坂本は腹落ちしなかったらしく、交渉を始めた。
現地のアメリカ人スタッフをはじめ、我々もドン引きするぐらいがめつい交渉だった。
「ハヤトもう諦めなよ。早くニューヨークで遊ぼうぜ」
とこちらが声かけしても。
「いや、絶対に俺は折れない」
と国家の使命を背負ったように燃えたぎる交渉を続ける彼は耳を貸さなかった。
呆れた坂本以外の3名は先にニューヨークシティへ行き、RVを捨てた清々しさを満喫することにした。
それが決まっても坂本は交渉をやめようとしない。
さようならRV、さようなら坂本。
僕・石原・冨澤を乗せたUberはニューヨークへ向かって走り出した。