The アメリカロード
僕のせいで数時間前に図らずもオープンカーになってしまったRVはラスベガスに向かって走り続けた。
はじめこそ修理代のことばかり心配していたが、ラスベガスに近づくにつれてそんなに高額は請求されるはずはないと根拠のない自信が湧いてきた。
フロントガラスからの景色を眺めていると、なんとかなるんじゃないかなと思える。
オーディオのボリュームを上げて窓を全開にした。
助手席に座る石原に代わり、冨澤が穴の空いた天井の下でアメリカの陽に照らされながら夢路をたどっていた。
3時間ほどでエルモンテのラスベガス支店に到着。運命の見積もりだ。
スタッフに指示されるままに車を付けると、大柄な黒人男性が簡易クレーンを運んできた。これを使って修理するのだろう。
金額
まだ旅の序盤ではあるが、不本意な出費を強いられた僕は腹をくくった。
運転しながら石原と請求金額を予想したが、2~3万円程度だろうなという結論に達した。
払える金額ではあるものの痛すぎる。旅の序盤にこの出費は痛すぎる。
RVを借りてはしゃいでいた初日、グリフィス天文台で楽しく歩いていた僕たち、ケタケタ笑いながらビールを飲んだあの夜、そして天井を破壊し嘘のようにテンションが下がる僕の様子が時々走馬灯のように脳裏を駆ける。
名前を呼ばれた。ちなみに代表者の名前は「Sakamoto」なので自分であることを認識するのに少し時間を要した。
石原とカウンターに向かうと、スタッフが金額が記載されたレシートを差し出してきた。僕と石原は目を疑った。
「$64」
もう一度。
「$64」
0をつけ忘れているんじゃないか。これだと7000円もしないぜ。
「本当にこの金額?」
「$64」
石原とハイタッチ。この程度の金額で済むなんて。これなら何回でも突き破ったていい。
修理代を聞いた坂本が嬉しそうに言った。
「浮いたお金全部カジノに賭ければいいんじゃない?」
なるほど。では早速、カジノがありそうなラスベガス中心地へ向かおう。
オープンカーではなくなったこのRVで。