2022.8更新再開。アメリカ編完結を刮目せよ。

アメリカ⑦(カリフォルニア)死ぬかと思ったパート1〜導入編〜

冨澤という男

一日中RVを走らせる生活も4日目となるとペースを掴み始め、冨澤、石原、僕の3人で運転手をシフト制で回すようになっていた。

日中は坂本が助手席に座り、残りの2人は仮眠をとる。わざわざ寝る必要は無いんじゃないかと思われそうだが、RVの構造上車窓を楽しむのは難しいし(そもそも景色にはもう飽きていた)、動く車の中でスマホをいじるのも酔いそうでよろしくない。

話題も2日目ぐらいには尽きたので話すこともないのだ。ひたすら寝る。これも立派な仕事だった。その分、夜中は元気なので夜勤組が夜中に距離を稼ぐ。何と効率的なのでしょう。

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筆者と石原の昼当番の様子。ちなみに運転席上もベッドになっているが、走行中は1分に1回のペースで事故と錯覚するような振動を受けるので人気は高くなかった

その日の夜勤当番は僕が助手席、運転手はベテランの冨澤。夜中のうちにヨセミテ公園に到着、公園内の駐車場で朝を迎える完璧この上ないスケジュールだ。

冨澤は運転に集中している。彼について紹介しよう。

あれは確か軽音楽サークルの新歓BBQだった。毛頭入るつもりはなかったが、良くしてくれる先輩に誘われて参加した。

僕は初対面の人と話す事に全く苦手意識は無いが、こういった新歓パーティーや大勢が参加するイベントになるとなぜかポツンと孤立する。

これは生まれつきのようで、幼稚園に入園してから3週間はほとんど誰とも口を聞かなかったし、高校は入学2日後、大学は入学後3日程度は誰とも話せなかった。

そのBBQにも、同じ匂いを纏った人間がいた、冨澤という男だった。

胸のガムテープーー新歓時期になると大学生がバカのひとつ覚えみたいに貼るアレですよーーを一瞥すると、「1男 総政 ギター トミー」と書いてある。

「君も総政(総合政策学部)なんだ。」

学内でもレア度の高い僕たちの学部は偶然見つけるとチョコボールのエンゼルを引き当てたかようにテンションが上り意気投合する。

お互いにその軽音楽部サークルには入会する気がないことが判明し、「ラサタ(イタリア語でパイパンの意)」というバンドを結成するも、一度も練習することなく自然消滅した。

彼のアパートに一度泊まったことはあるが、それ以外の思い出はほとんど無いため、この旅を経て人間関係が活性化した特殊な人物だ。先日も浅草の「駒形どぜう」にドジョウ鍋を二人で食べに行った。

追記:2020年11月から5月までルームシェアしてました。

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グリフィス天文台での富澤。前乗りして足を運んだ「サンタモニカ・カレッジ」のトレーナーがかわいらしい

決断

どれぐらいの時間走っただろうか。いつの間にか周りの車は消えた。山道に入ったようだ。サイドガラスの下を見ると、崖!!

路面には雪が積もっており、よく見ると凍っている。崖・雪・闇。完全にリーチだ。しかもガードレール無しという役までついている。

極めて危険な状況。非番の二人はスヤスヤ寝息を立てているだろう。幸せ者め。どうしようか。僕と冨澤はハレンチな男である。引き返すほうが危険だと判断し、このままRVを進めることにした。

続く。

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